愛媛県 松山市 米本マタニティクリニック 産婦人科

院長のコラム

【ベビードック】

現在産科では経腟と経腹超音波がありますが、国内では我が順天堂大学が先駆者として他にさきがけて研究・開発を行い、広く一般に用いられるようになったといわれています。

当クリニックでは順天堂大学産科超音波診断方式を基本として、さらに初期ドックをご提供することにより異常のなきを確認することを最優先に診療しています。
実際お腹の赤ちゃんの病気には多くの種類があり、統計上100人に4-5人の赤ちゃんには何らかの生まれつきの病気があるといわれています。

このことから当院では
妊娠初期(11-13週)、中期(18-20週)、そして後期(28-30週)としてベビードックを行っています。

1.妊娠初期ドック
Down症、18,13トリソミーの確率を計算することが目的となります。

妊娠初期の赤ちゃんの評価を行うためには
英国Fetal Medicine Foundation(FMF)に認定されてはじめて検査を行うことができます。
具体的には首の後ろのむくみ(後頸部肥厚)、鼻骨(軟骨)、心臓の弁の動き(三尖弁逆流)、静脈菅血流(へその緒とお腹の赤ちゃんのもっとも太い血管のひとつである下大静脈とをつなぐところに静脈菅というのがあります)、そして赤ちゃんの身長(Crown Rump Length:CRL)の5項目を調べます。
その後Down症、18,13トリソミーの確率を計算します。

おおよそ20分ほどで検査は終了となりますが、赤ちゃんの位置によりしばらく院内を歩いてもらうなどして再度検査を受けていただくこともあります。

2.妊娠中期ドックとは
ベビードックとは赤ちゃんの頭から足先までを十分に確認することが基本です。
中期・後期ドックでは、まず左右の脳の構造、それをつなぐ脳梁の存在、脳室内そして脳室周囲の状態や小脳の形を確認します。その後顔の観察にとりかかり、唇がわれていないか、眼球がみられ白内障などないかなど観察します。
さらに下方(胸部)にすすめていき、心臓の形(右房、右室、左房、左室)、それらをつなぐ弁の動きや壁の形、右室から出る肺動脈、左室から出る大動脈の向きと血管の太さなどを確認します。
お腹の臓器としては左に胃、右に肝臓及び肝臓内に胆嚢が認められます。
もっと下に進めていくと背中には腎臓、そこで作られる尿(これが羊水となります)が膀胱へと溜まり、外陰部に目を向けると性別の判定も可能となります。我々日本人はもともと葉酸が不足していることから脊椎の発達が悪いとされているため、その観察は入念に行っていきます。その後胎盤の形や位置、へその緒との位置関係を観察します。

3.妊娠後期ドックとは
注意して観察する項目は中期とほぼ同じですが、後期には消化管や頭の病気が見つかることがあります。またおなかの赤ちゃんが成長していくため必然的に内臓も成長し、よりよくその形と異常がわかりやすくなります。

確認する項目(中期さらに後期、ただしこれら限りではありません)

頭・脳
大きさ・形、大脳の形(脳溝・脳梁・脳内構造)、脈絡叢、第3・4脳室、後頭蓋窩
小脳の大きさと虫部の形、眼窩と眼球、鼻骨・鼻孔、口唇・口蓋、後頸部皮下組織の状態
耳介の位置と形、頸部の向きの状態

胸部
肺の形、以上の有無、胸郭と縦隔

心臓・大血管系
大きさ、位置、向き、壁の厚さ、弁の動きと枚数、房室間血流
Four chambar view, three vessel view, three vessel trachea view
両大血管の起始部の確認、肺静脈の還流、大動脈弓・動脈管の形

腹部
胃、肝臓の位置、胆嚢の形とサイズ、肝内胆菅、腎臓・副腎の形、と腎盂の状態
膀胱の形、腸菅(小腸径と大腸の鑑別)

四肢
長さ、骨の数と動き、太さ、足関節の向き、足先の形

外性器
形の異常

脊椎
二分脊椎及び潜在性二分脊椎の有無

現在中期および後期ドックはオリジナルUSBメモリに保存することができますのでご希望のおかあさんは遠慮なくスタッフにお伝えください。

Q 1. 通常の妊婦健診で行われる超音波との違いについて
妊婦健診での超音波検査は、妊娠の経過が順調であるかを知るための基本の検査です。
一方初期ドックは染色体異常の確率、中期・後期ドックはお腹の赤ちゃんの形に異常がないことを重点的に確認する精密な検査です。

Q 2. 初期ドックを受ける意味について教えて下さい。
A. 従来より形の学問である超音波診断と染色体異常とは分けて考えるべきであるとされています。例えば超音波で通常の見え方と異なり染色体異常を疑ったとしても羊水検査により異常がなかったことは多々あります。
今から15-6年前初めて欧米の nicolaidesらが世界中から膨大なデータを集めて、妊娠初期に上記5項目を測定することによりDown 症、18,13トリソミーの確率をご提供できることに成功しました。
この革命的な検査は徐々に世界中に広まり我が国でもFMFにより認定されたおおよそ70箇所のみの超音波検査医師にだけ検査が許されています。
その後正確性は80-85%と高いものとなっていますがあくまで統計学のため100%とはなりません。

Q 3.中期•後期ドックはどうでしょうか。
中期ドックは順天堂時代より最も力を入れていた検査です。といいますのも産まれた後発達障害が必発となる病気が見つかることがあるためです。上記で述べた検査項目はほんの一部であり、もっと多岐にわたってみていきます。自分がこれまで経験した頭の百科辞典の中からこれは大丈夫、これは症状が出てしまうと考えていきます。

重要なことはたとえ異常があったとしても
①成長と同時に自然と治っていくものも数多くありますので、そういった病気なのか、
それとも
②すぐに治療が必要なのか、治療により完治するか、
残念ながら
③治療を施しても完治が困難なのか、
これらは出産後も新生児科や小児外科と連絡を密にし治療経過を十分に経験し、updateしなければお母さんに説明は出来ません。

残念ながら多くが超音波精密外来と称して検査を行う医療機関が増えてきていますが、異常を見つけるのみでその後の経過を十分に説明できないため、すぐに周産期センターに搬送するのが現状です。これではお母さん方をいたずらに不安にするだけだと思います。

20•30週のベビードックはまず異常なきを確認する、そして仮に異常が見つかったとしても①,②,③を判断しお伝えすることであると考えています。

米本 寿志